久しぶり
土曜の午後3時都内某駅西口
「久しぶり!」
カズヤは、軽く笑みを浮かべ決まり文句のように声をかけ続けている。
相手はファーストフードで独り雑誌をめくりながらストローを加える女だったり、タバコをふかす女だったり。本屋で立ち読みをする女にも、パチスロ店でひたすらボタンを押す女にも・・・。

見知らぬ男から「ひさしぶり!」と突然声をかけられ、キョトンと黙り込んでしまう女や、怪訝な目つきでにらみ返す女、愛想笑いを浮かべて「どなたでしたっけ?」と言葉を返してくれる女。

後残り5人で約束の20人達成だ。はやくこんなゲームから解放されて、何処か適当な場所を見つけて一服しよう。

そもそも、云いだしたのはカズヤのほうだった。
「キサ、もしさ突然知らない男から、久しぶり!って声をかけられたらどうする?」
「そんなことってないと思うけどね、もし相手がカズヤだったら、私も久しぶり!って笑って答えるかな~」
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