久しぶり
「ねぇ、前に逢った事あるっけ?」
カズヤは思わず、その彼女に問いかけてしまっていた。
「あるよね、ずっと以前に・・・」
「ゴメン、俺はぜんぜん思い出せないよ。何年前?何処で?」
「私とあなたは、1000年以前も、700年以前も230年以前も・・・生まれ変わるたびにこの地球のあっちこっちで出逢ってるよ!覚えてないの?(笑)」

この子ちょっとオカシイのか?
そう思った瞬間、その彼女はカズヤの眉間を右の人差し指で軽く押さえた。
「ちょっと目を閉じて、何も考えずにゆっくり呼吸してね」
云われるままにカズヤは目を閉じ、呼吸を続けた。

数秒後か、数十秒後か・・・カズヤは不思議な光景を瞼の裏に写していた。
まるで古い映画を見ているかのようにセピア色、遥か昔の異国でキサ、いや今目の前に居る彼女に似た女性と楽しそうに話をしている。

抱き合う二人、罵り合う二人、囁き合う二人、いくつもの時代や国へ場面を変えながら、止め処なく二人の場面が流れ続ける・・・

どの位の時間、瞼の裏のその不思議な映像に浸っていたのだろう・・・カズヤは眉間に当てられていた彼女の指先の細い温もりが消えている事に気づいて目を開けた。

そこにはもう・・・彼女の姿はなかった。

~終わり~
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