榎本氏
「ところで、本日のお二人のご用向きは?」
「素晴らしいご息女に、感服致しました。それ故に、お話ししておきたいことがあるのです。」
「…。」
「ご息女を、この瀧雄の北方にお迎えし合いのです。」
「瀧雄様には、わが娘が、お気に入られた、ということでございましょうか?」
「その通りです。やはり、榎本家の方々は、歌をお詠みになるのがお上手、と見える。それだけに、我が清原家へ嫁がれたら、女君の嗜みとして、今練習されている、五節舞や筝の琴以外にも、様々な舞や楽器に触れるようにして頂きたいのです。」
「わが娘に理解できましょうか?」
「私共が、お教え致しますので、
心配には及びません。それと、英則殿の北方も、今次々とご懐妊の様子、二の君と三の君も、それぞれ、沢雄と秋雄の北方に下さらぬかな?」
「…。」
「それと、立て続けにお願い事で申し訳ないが、榎本殿は、今何人目のお子がおいでであたかな?」
「昨年、北方が、五人目の娘を出産致しました。」
「これは、すごい。私のところとは、大違いですな。では、四人目以下のお子を、男女とも、唐の国へ勉強に行かせては、いかがですかな?」
「唐の国へ、でございますか?」
「そうです。」
子供を唐の国に行かせろ、などと、清原氏は、天皇家にも好感を持たれ、代々子沢山で、出来の良い子息が育っている榎本家を、弱体化させたい、という意図がなくはなかった。瀧雄殿と小竹の上を結び付けようとするのも、明らかにその手段であった。
「清原様。我が榎本家では、武術の心得を皆が持つようにするため、実子から家臣に至るまで、皆武術の稽古をし、家長である私が、総指揮を取らせて頂いております。自分の子たちを、危険な外国への航海に出す必要はない、と考えられるのですが…。」
「英則殿。榎本家は、武術のみでなく、代々優れた琴の名手や、五節舞の名人をお育てになってきたではありませんか。青海波の上手な方も、数多く輩出されています。それ程多様なことに優れておいでなら、今のうちに外国のことも勉強されておかれるのが、お子たちのため、とはお考えにならないのですか?」
「四の君以下は、まだ幼少でありまして…。」
「分かりました。では、四の君が十五歳になったら、唐の国へ航海させるのが、よいでしょう。」
「それなら、私も今後、唐の国の様子など、よく勉強したいと存じますので、いろいろとご指導を賜れますよう、お願い致します。」
「それは、お安い御用です。」
「それと、小竹の上には、明日より毎日、我が家へ通わせて下さい。瀧雄から、北方へ指導するべきことがありますので。」
「畏まりました。」
「小竹の上には、外国の雅楽や楽器も習い覚えて頂きます。」
「あまり多くのことを、一篇に覚えることは、でき兼ねるかと考えられますが…。」
「榎本家の姫君なら、問題ありますまい。」
「左様でございますか。では、宜しくお願い致します。」
榎本英則氏は、清原夏野氏にはそう答えたものの、小竹の上が、清原家へ通い、教育を受けることに、何か一抹の不安を感じていた。清原夏野氏と瀧雄氏が帰った後、夜になると、英則殿は、北方・節紫姫と床を共にしながら、言いようのない不安を抱えているご自身の心情を、妻である節紫姫に打ち明けた。
「北方よ。」
「はい。」
「清原殿をどう思う?押し付けがましいとは、思わないか。」
「…。」
「人の娘を、異国へ勉強に出せ、のなんのと言いおって。」
「…。」
「私は自分の両親と同じように、お互いにどこまでも思い合って、多くの子供を授かっていくことが、幸せなことだと思っていた。あなたのとの間に、両親と同じように、あるいはそれ以上に、多くの子宝を授かることができあら、どんなに幸せだろうかと考えていた。だが、いくら子宝がたくさんあっても、自身の考えを生かした教育ができるなら、子宝を多く持つことは、幸せなことだが、小竹の上を嫁がせようとするだけで、他人に、娘をどこで勉強させろ、などと横槍を出されるくらいなら、子供など産まない方が、どんなにかよいだろうか。私とあなたの間に、子供が生まれてくる意味がないような気がするのだ。」
節紫姫は、夫である英則殿の胸中を察したが、心の底から、もっと多くの英則殿の子供を産みたい、と思っていたので、浮かない夫の両手が、自身の豊満な身体の部位に触れられるように、自身は英則殿に背を向ける形を取った。そして、自分から英則殿の両手を取り、豊満な部位の中に、その手を滑り込ませた。英則殿は途端に気持ちが高ぶって、節紫姫の白装束の上半身部分を取った。そして、英則殿は、節紫殿の弾力性と生命力に満ちた身体に触れ続けた。英則殿は、既に毎日のように、節紫姫の豊満な部位を楽しみ、その柔らさに嫌なことを、何でも忘れてきたのであった。
「あなたの方から、私の手を取ったのだよ。今夜は、あなたのここから手を離さないよ。」
節紫姫は、自身が自慢に思っている部位の周りを楽しそうに動く夫の手の感触を、ご自身でも楽しみながら言われた。
「清原様に、娘を全員取られたとしても、殿には、この私がおりまする。清原様のために、異国へ娘を取られたら取られたで、殿と私がまたその分子作りをすれば、良いのでございます。」
「いや。しかし、清原殿側は、まだ小竹の上と瀧雄殿の結婚の儀については、まだ日程も明らかにしていないのに、明日からいきなり、自分の家に人の娘を勉強に寄越せ、とは一体何事であろうか?」
「それ程ご心配であれば、殿御自ら、小竹の上について行かれれば、よろしうございます。」
英則殿よりも六歳も年上の節紫姫は、英則殿の母親になったような態度であった。毎日のように、英則殿が、節紫姫の豊満な部位や蕾に触れてくるので、蕾などは節紫姫にとって、尋常な痛み方ではなかったが、節紫姫は節紫姫で、その身体に根付いている弾力性で、痛みを跳ね返していた。
「そうすれば良いか…。しかし、清原様は、小竹の上と歌の遣り取りを随分たくさんおやりになったらしい。」
英則殿は、そこで今一度ご自身の指に力をお入れになった。節紫姫は豊満な部位もろとも、ご自身の身体を丸く張り、呼吸をされた。その呼吸が、英則殿に伝わった。
「私も、殿に嫁ぐ前は、殿と随分歌の遣り取りをさせて頂きましたわ。」
「あなたの方から私に歌を送ってきたのだよ。」
英則殿は更にもう一度ご自分の指に力をお入れになると、節紫姫の蕾から、ご自身の指をお離しになり、寝所の床の上に、節紫姫が仰向けになるように、押し倒した。英則殿は、節紫姫の上に載って、節紫姫の体ごと組み敷いた。節紫姫は、気持ちよさそうに、英則殿の身体を受け入れた。それでも、英則殿の不安がなくなったわけではなかった。
その翌日から早速、小竹の上は清原家へ通う日々となっていた。小竹の上にとっては、毎日が習い事の日々が始まる筈であった。この日の早朝、榎本英則氏は、北方・節紫姫との眠りから目を覚ますと、まだ寝ている節紫姫のことを一人寝所に残して起き出し、小竹の上と共に、清原家の寝殿へ向かわれた。清原家で、小竹の上を受け入れたかった夏野氏と瀧雄氏は、小竹の上に同行してきた父君の榎本英則氏を見ると、夏野氏の方が、からかって言った。
「おやっ?もう嫁に出されるご息女に、父君が付き添われるとは、英則殿も、まだ子離れがおできになれないのですかな?」
「清原様のご子息と我が一の君は、まだ結婚の儀について、正式に日程を決めて頂いておりません。それゆえ、まだ嫁には出していない娘にございますれば、勝手の違うよそ様詫へお邪魔して、粗相があってはなりませんので、本日はこうしてついてきた次第であります。」
「まあ、よいでしょう。」
英則殿は、小竹の上と共に、清原家へ通された。小竹の上に、楽器の手ほどきをするため、唐の国などからも、楽器の師匠が五人程招かれ、既に準備していた。
一方、節紫姫は、まだ夢の続きを見るかのように、英則殿が寝所を去った後も、一時間ほど寝ていて、遅れて起き上げると、出仕し、良家の子女たちに、五節の舞を教えるために、動き出した。
「素晴らしいご息女に、感服致しました。それ故に、お話ししておきたいことがあるのです。」
「…。」
「ご息女を、この瀧雄の北方にお迎えし合いのです。」
「瀧雄様には、わが娘が、お気に入られた、ということでございましょうか?」
「その通りです。やはり、榎本家の方々は、歌をお詠みになるのがお上手、と見える。それだけに、我が清原家へ嫁がれたら、女君の嗜みとして、今練習されている、五節舞や筝の琴以外にも、様々な舞や楽器に触れるようにして頂きたいのです。」
「わが娘に理解できましょうか?」
「私共が、お教え致しますので、
心配には及びません。それと、英則殿の北方も、今次々とご懐妊の様子、二の君と三の君も、それぞれ、沢雄と秋雄の北方に下さらぬかな?」
「…。」
「それと、立て続けにお願い事で申し訳ないが、榎本殿は、今何人目のお子がおいでであたかな?」
「昨年、北方が、五人目の娘を出産致しました。」
「これは、すごい。私のところとは、大違いですな。では、四人目以下のお子を、男女とも、唐の国へ勉強に行かせては、いかがですかな?」
「唐の国へ、でございますか?」
「そうです。」
子供を唐の国に行かせろ、などと、清原氏は、天皇家にも好感を持たれ、代々子沢山で、出来の良い子息が育っている榎本家を、弱体化させたい、という意図がなくはなかった。瀧雄殿と小竹の上を結び付けようとするのも、明らかにその手段であった。
「清原様。我が榎本家では、武術の心得を皆が持つようにするため、実子から家臣に至るまで、皆武術の稽古をし、家長である私が、総指揮を取らせて頂いております。自分の子たちを、危険な外国への航海に出す必要はない、と考えられるのですが…。」
「英則殿。榎本家は、武術のみでなく、代々優れた琴の名手や、五節舞の名人をお育てになってきたではありませんか。青海波の上手な方も、数多く輩出されています。それ程多様なことに優れておいでなら、今のうちに外国のことも勉強されておかれるのが、お子たちのため、とはお考えにならないのですか?」
「四の君以下は、まだ幼少でありまして…。」
「分かりました。では、四の君が十五歳になったら、唐の国へ航海させるのが、よいでしょう。」
「それなら、私も今後、唐の国の様子など、よく勉強したいと存じますので、いろいろとご指導を賜れますよう、お願い致します。」
「それは、お安い御用です。」
「それと、小竹の上には、明日より毎日、我が家へ通わせて下さい。瀧雄から、北方へ指導するべきことがありますので。」
「畏まりました。」
「小竹の上には、外国の雅楽や楽器も習い覚えて頂きます。」
「あまり多くのことを、一篇に覚えることは、でき兼ねるかと考えられますが…。」
「榎本家の姫君なら、問題ありますまい。」
「左様でございますか。では、宜しくお願い致します。」
榎本英則氏は、清原夏野氏にはそう答えたものの、小竹の上が、清原家へ通い、教育を受けることに、何か一抹の不安を感じていた。清原夏野氏と瀧雄氏が帰った後、夜になると、英則殿は、北方・節紫姫と床を共にしながら、言いようのない不安を抱えているご自身の心情を、妻である節紫姫に打ち明けた。
「北方よ。」
「はい。」
「清原殿をどう思う?押し付けがましいとは、思わないか。」
「…。」
「人の娘を、異国へ勉強に出せ、のなんのと言いおって。」
「…。」
「私は自分の両親と同じように、お互いにどこまでも思い合って、多くの子供を授かっていくことが、幸せなことだと思っていた。あなたのとの間に、両親と同じように、あるいはそれ以上に、多くの子宝を授かることができあら、どんなに幸せだろうかと考えていた。だが、いくら子宝がたくさんあっても、自身の考えを生かした教育ができるなら、子宝を多く持つことは、幸せなことだが、小竹の上を嫁がせようとするだけで、他人に、娘をどこで勉強させろ、などと横槍を出されるくらいなら、子供など産まない方が、どんなにかよいだろうか。私とあなたの間に、子供が生まれてくる意味がないような気がするのだ。」
節紫姫は、夫である英則殿の胸中を察したが、心の底から、もっと多くの英則殿の子供を産みたい、と思っていたので、浮かない夫の両手が、自身の豊満な身体の部位に触れられるように、自身は英則殿に背を向ける形を取った。そして、自分から英則殿の両手を取り、豊満な部位の中に、その手を滑り込ませた。英則殿は途端に気持ちが高ぶって、節紫姫の白装束の上半身部分を取った。そして、英則殿は、節紫殿の弾力性と生命力に満ちた身体に触れ続けた。英則殿は、既に毎日のように、節紫姫の豊満な部位を楽しみ、その柔らさに嫌なことを、何でも忘れてきたのであった。
「あなたの方から、私の手を取ったのだよ。今夜は、あなたのここから手を離さないよ。」
節紫姫は、自身が自慢に思っている部位の周りを楽しそうに動く夫の手の感触を、ご自身でも楽しみながら言われた。
「清原様に、娘を全員取られたとしても、殿には、この私がおりまする。清原様のために、異国へ娘を取られたら取られたで、殿と私がまたその分子作りをすれば、良いのでございます。」
「いや。しかし、清原殿側は、まだ小竹の上と瀧雄殿の結婚の儀については、まだ日程も明らかにしていないのに、明日からいきなり、自分の家に人の娘を勉強に寄越せ、とは一体何事であろうか?」
「それ程ご心配であれば、殿御自ら、小竹の上について行かれれば、よろしうございます。」
英則殿よりも六歳も年上の節紫姫は、英則殿の母親になったような態度であった。毎日のように、英則殿が、節紫姫の豊満な部位や蕾に触れてくるので、蕾などは節紫姫にとって、尋常な痛み方ではなかったが、節紫姫は節紫姫で、その身体に根付いている弾力性で、痛みを跳ね返していた。
「そうすれば良いか…。しかし、清原様は、小竹の上と歌の遣り取りを随分たくさんおやりになったらしい。」
英則殿は、そこで今一度ご自身の指に力をお入れになった。節紫姫は豊満な部位もろとも、ご自身の身体を丸く張り、呼吸をされた。その呼吸が、英則殿に伝わった。
「私も、殿に嫁ぐ前は、殿と随分歌の遣り取りをさせて頂きましたわ。」
「あなたの方から私に歌を送ってきたのだよ。」
英則殿は更にもう一度ご自分の指に力をお入れになると、節紫姫の蕾から、ご自身の指をお離しになり、寝所の床の上に、節紫姫が仰向けになるように、押し倒した。英則殿は、節紫姫の上に載って、節紫姫の体ごと組み敷いた。節紫姫は、気持ちよさそうに、英則殿の身体を受け入れた。それでも、英則殿の不安がなくなったわけではなかった。
その翌日から早速、小竹の上は清原家へ通う日々となっていた。小竹の上にとっては、毎日が習い事の日々が始まる筈であった。この日の早朝、榎本英則氏は、北方・節紫姫との眠りから目を覚ますと、まだ寝ている節紫姫のことを一人寝所に残して起き出し、小竹の上と共に、清原家の寝殿へ向かわれた。清原家で、小竹の上を受け入れたかった夏野氏と瀧雄氏は、小竹の上に同行してきた父君の榎本英則氏を見ると、夏野氏の方が、からかって言った。
「おやっ?もう嫁に出されるご息女に、父君が付き添われるとは、英則殿も、まだ子離れがおできになれないのですかな?」
「清原様のご子息と我が一の君は、まだ結婚の儀について、正式に日程を決めて頂いておりません。それゆえ、まだ嫁には出していない娘にございますれば、勝手の違うよそ様詫へお邪魔して、粗相があってはなりませんので、本日はこうしてついてきた次第であります。」
「まあ、よいでしょう。」
英則殿は、小竹の上と共に、清原家へ通された。小竹の上に、楽器の手ほどきをするため、唐の国などからも、楽器の師匠が五人程招かれ、既に準備していた。
一方、節紫姫は、まだ夢の続きを見るかのように、英則殿が寝所を去った後も、一時間ほど寝ていて、遅れて起き上げると、出仕し、良家の子女たちに、五節の舞を教えるために、動き出した。