榎本氏
{あらすじ}七〇〇年代に入り、吉備真備が唐へ留学することになるところから、物語は始まる。
 吉備真備は、唐の留学から帰国すると、藤原房前の娘・園姫と結婚し、七五四年には、次女・藤姫が誕生した。吉備真備の次女として、当時の武官・榎本氏へ嫁いだ藤姫に始まる第一章から、第二章では、榎本英樹氏の親友・徳川龍之介の息女・節紫姫、第三章では、同じく英樹氏の親友・満田亀造氏の息女・雪姫、と榎本家に嫁いできた女君たちの物語である。
 そして、第三章では、清原家へ嫁ぐ節紫姫の息女たちが登場する。節紫姫の六人の息女たちは、琴を奏でるのが上手なことから、他の楽器についても、清原氏の養育を受ける。息女たちは上から順番に、小竹の上、琴次の上、琴三の君、琴四の君、琴五の君、琴六の君、と呼ばれていた。第三章では他にも、長女の小竹の上が、琴のこと、筝のこと、太鼓、琵琶、縦と横の笛、雅楽、などについて、清原家の長子・瀧雄氏から講義を受ける様子が描かれる。小竹の上は、瀧雄氏と結ばれ、琴次の上は、沢雄氏が娶り、琴三の君は、秋雄氏に嫁いだ。琴四の君以下は、外国へ留学し、琴四の君は、ビザンティン帝国・テオフィロス帝の皇后となり、琴五の君は唐の文宗帝の妃となり、琴六の君は、新羅・文聖王の王妃となった。このうち、琴四の君は、ローマ皇帝が淫乱であったため、自分の子供以外にも、遊女たちの生んだ子供の面倒まで見る羽目になり、姉・小竹の上や父・榎本英則氏の援助を受けた。第三章は、様々な楽器に関する記述がある点と、外国の皇后や王妃になっていく、節紫姫の息女たちの様子が描かれている点が特徴と言える。また、第三章では、榎本英樹氏が、榎本・徳川・満田三家に通じる遺言状を認め、それを長子・英則に託そうとしていることなども触れられている。吉備真備の娘・藤姫が榎本氏に嫁ぎ、榎本氏と藤姫の子孫たちの栄枯盛衰を描いていく。
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