花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
わかる。
美和子ちゃんが言いたいことは、よく分かる!
だけど、それはそれ!
これはこれなんだよ。
私は涼くんが好きだし、頼くんのことは本当に弟みたいに思ってて、だけど頼りになる頼くんについつい甘えてる部分もあって。
いつも情けないなって思ってる。
だけど、本当にそれだけだよ!?
頼くんのことを、男として意識してるなんて……まさかそんなこと
「花、」
「だから、頼くんは本当に」
「違う、そうじゃない。……あれ、こっち来てない?」
「へ……?」
視線の先。
紅いハチマキをした頼くんが、グラウンドの芝の上を爽やかに走ってくる。
目が合ってるような気もするし、合ってないような気もする。
これはあれだ。
大好きなアイドルのコンサートで、すっごい遠くからウィンクされたのを「あ、今の絶対私にウィンクした!」って思うのと同じ原理。
そう信じて疑わなかったのに。
手にはお題の紙を握りしめたまま、迷うことなく走る頼くんが、
「花、俺と走って」
私たちのいる場所より3メートル向こうから、ハッキリと私の名前を呼んだ。