花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
いや、確かに……そうかもしれないけど。
「ほら、走るぞ!」
ギュッと私の手を掴んで、引っ張るように走り出した頼くんに「ぅわ!」と前のめりになりながら必死に足を動かす。
思ってた数倍早い頼くんのスピードに、運動不足がたたって何度も転びそうになる。
その度、私を振り返った頼くんがイタズラに笑うから心臓が変にドキドキして、余計苦しくなった。
───パァンッ
ゴールテープを切れば、同時にピストルがグラウンド中にゴールを知らせた。
頼くんは余裕綽々、呼吸が乱れることも知らず知らずに笑顔の1位。
そして、ゴールで待っていた体育委員にお題の紙を手渡して、クリアの判定を待っている。
私はその隣で大きく肩で息をして、なんとか乱れた呼吸を整えようと膝に手をつく。
……だめだ、ちっとも落ち着かない。
胸がドキドキして、とにかく酸素が足りない。
全部、全部、頼くんのせい。
「お題はクリアです!まさか、白いハチマキの女の子を紅いハチマキの女の子に染めてしまうなんて!いよっ、お見事!」
心が休まる間もなく、体育委員の声がマイクを通してグラウンドに響いた。