花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
……お題、クリアで良かった。
こんなに一生懸命走ったのに、無駄になったら学校中の笑いものだよ。
「頼くん、よかったね」
「花も、すげぇ走んの遅かったけどサンキュ」
「ひ、一言余計だよ!がんばったのに!」
ハハッと楽しそうに笑う頼くんは、やっぱり航と同じ年下の男の子。
なのに、たまに見せる頼くんの表情にどうしようもなくドキドキするのはどうしてだろう。
体育委員に案内され、頼くんは1位のピンクリボンを胸に付けられたあと、他の走者が全員ゴールするまでの間、少し離れた場所にしゃがんで待つよう指示された。
私はその後を静かに追って、頼くんの手に握りしめられたままの白いハチマキを見つめる。
「……あの、頼くん」
せっかく涼くんと交換してもらったハチマキを、ここで頼くんに返してもらわないわけには行かない。
もうゴールだって済ませたわけだし。
ハチマキ元の色に戻したっていいよね?
「あぁ……、これ?」
「うん、返して。これ返すね」
紅いハチマキを首から外して、頼くんに向けて差し出せば、頼くんはしゃがんだまま私を上目遣いに見上げる。