花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
フッと小さく頼くんが笑って、すぐに真剣な顔に戻る。
「どんな顔って……涼くんのことだからきっと、頼くんに取られたって言ったら笑ってくれると思うけど」
うん。
涼くんの性格からして、きっとカラッと笑って「そうなんだ〜」とか言うんだよ、きっと。
私のハチマキと交換したいとか言うのも気まぐれに過ぎなくて、私が誰のハチマキを付けてたって、気に求めないはず。
「そうか?俺はどんなずるいことしても、他の男のハチマキなんてさせない」
「え、」
「ま、いいや。涼が嫉妬するか、しないか。確かめてみる価値はあるし。……だから"これ"は返さない。花は体育祭が終わるまで俺のハチマキしてること、分かった?」
"これ"と言いながら、涼くんの白いハチマキを左右に揺らして、有無を言わさぬ圧力で私に紅いハチマキを付ける義務を与えた。
あぁ、もう。
涼くんが嫉妬なんてするはずない。
そう思う気持ちと、でも……もしかして?そんな気持ちが入り乱れて、結局、頼くんの言葉に首を振れなかった私は
「……わ、分かったよ」
白組のくせに、紅いハチマキを巻いて過ごすことになってしまった。こんなこと、モアイにバレたらどうなることやら……。
だけど、私は今日も頼くんの言いなりだ。