花ちゃんは今日も頼くんの言いなり


「ちょ!花!?いいから、ほんと!」



そんな私を美和子ちゃんが慌てて止めるけど、ガチャッとドアの開く音がして「なにー?」と航の声が響いた。



「美和子ちゃん、家まで送ってくれない?1人で帰すの心配で」



階段の上まで出てきた航にそう告げれば、一瞬目を見開いた航。なにその反応、嫌なの?なんて思ったのも束の間、


「分かった。待って、上着取ってくる」


それだけ言うと、すぐにまた部屋へと戻り宣言通り上着を手にした航は階段をダダダと降りてきた。


なんだ、行く気満々じゃん。



「みわ先輩、行こう」

「いや、ほんとに1人で」

「俺が心配だから、ダメ。送ってくから帰ろ」



サラッとそんな言葉を吐いて、玄関のドアを押し開いた航に私と美和子ちゃんは揃って目を見開いた。


けど、美和子ちゃんはすぐに頬を赤く染める。



……もしかして、航も美和子ちゃんのこと好き?この2人、両思い!?


そんな淡い期待を抱いては、さっきの航の言葉が脳内でリフレインして、弟の胸きゅんセリフをこんなに間近で聞いてしまった姉は、


照れくさいような、微笑ましいような……複雑な心境だ。
< 126 / 214 >

この作品をシェア

pagetop