花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
「えっと、じゃあ!部屋に異性と2人きりだから?」
この回答だと、自分を『女の子』だと言っているみたいで恥ずかしいけれど。
他に思いつく点もない。
もしこれで「花は女の子じゃない」なんて言われたらどうしよう……なんて、内心変に構えてしまうのは、多少なりともまだ女の子の自分が残っているから。
頼くん相手に”女の子”な部分を見せる必要はないんだろうけど、だからと言って”男の子”ではないわけだし。
「だいぶ近づいたけど……。つーか、マジでどこまで鈍いわけ」
「え、鈍いって、っ!?」
たった今、ローテーブルを挟んで向こう側にあったはずの頼くんの顔が───ズイッと近づいて、頼くんがローテーブルに手をついて体を乗り出しているんだって理解するまで時間がかかった。
「俺、部屋に女入れるの初めてなんだよね」
「……よ、頼くん?あの、」
「なんでだと思う?」
吐息がかかる、そんな距離。
視線が絡んで吸い込まれそうになる。
後ろに少し後ずされば、簡単に逃げられるはずなのに、それが出来ないくらいに体が頼くんに支配されている、そんな感覚。