花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
「ち、近いよ、頼くん」
「わざとじゃん」
「なっ……、あ!もしかして頼くん熱でも」
この雰囲気をどうにかしたくて、慌てて頼くんのおでこに手を伸す。
けれど、
その手は意図も簡単に頼くんの手に掴まれて、動くことをやめた。
「熱ならあるよ、変な熱。……つーか、こういう状況でペラペラ喋るなよ」
呆れたように苦笑いを浮かべる頼くん。
だけど、その顔はやけに優しくてトクントクンと心臓が加速する。
おかしい。
勉強、しに来たはずなのに……。
床に放り出されたバッグ。
開くことなく閉じたままのワーク。
シャー芯がこんにちはしていないシャーペン。
本当に勉強する気があるの?と聞かれてもおかしくないこの状況で、多分、頭は勉強中よりも稼働している。
「だって、なんか頼くん変だから」
「……俺が変だとしたら、それ、全部花のせいだから───」
フワッと香る、頼くんの匂い。
今よりもっと近づく頼くんの気配に息を呑む。
”責任とれよ”
私の耳にその言葉が届いた時にはもう、頼くんとの距離はゼロで、唇から伝わる頼くんの熱が私にも伝染ったらしい。
カラダが火照るほど熱かった。