花ちゃんは今日も頼くんの言いなり



頼くんの大きな手が私の後頭部に添えられて、支えられながら何度も角度を変えて降ってくるキス。


酷く優しく触れる頼くんに、思考回路を奪われて、なんだか泣きたくなってくる。


───なのに、不思議と嫌じゃない。




不意に唇が離れて、見つめ合う。

やっと肺いっぱいに空気を吸い込めたというのに、やけに苦しいのはなんでだろう。




「……頼くん、あの」



聞かなくちゃって思った私が口を開いたのとほぼ同時。───ガチャ、と部屋のドアが開く音がして



「頼、借りてたマンガ返しに来た……って、三津谷?」



流れるように部屋へと入ってきた涼くんが、私を見つけて目を見開いた。



「涼、くん」



思わず声が掠れてしまう。


そりゃ、同じ家に住んでるんだから居たっておかしくない。むしろ昨日の夜は「涼くんに会えたらラッキー」なんて思ってた。


だけど今は、頼くんとあんなことがあった直後で、勝手に涼くんに後ろめたさを感じている。


別に、彼女でもなんでもないのに。


< 144 / 214 >

この作品をシェア

pagetop