花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
頼くんの大きな手が私の後頭部に添えられて、支えられながら何度も角度を変えて降ってくるキス。
酷く優しく触れる頼くんに、思考回路を奪われて、なんだか泣きたくなってくる。
───なのに、不思議と嫌じゃない。
不意に唇が離れて、見つめ合う。
やっと肺いっぱいに空気を吸い込めたというのに、やけに苦しいのはなんでだろう。
「……頼くん、あの」
聞かなくちゃって思った私が口を開いたのとほぼ同時。───ガチャ、と部屋のドアが開く音がして
「頼、借りてたマンガ返しに来た……って、三津谷?」
流れるように部屋へと入ってきた涼くんが、私を見つけて目を見開いた。
「涼、くん」
思わず声が掠れてしまう。
そりゃ、同じ家に住んでるんだから居たっておかしくない。むしろ昨日の夜は「涼くんに会えたらラッキー」なんて思ってた。
だけど今は、頼くんとあんなことがあった直後で、勝手に涼くんに後ろめたさを感じている。
別に、彼女でもなんでもないのに。