花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
グルグル、頭の中は花のことでいっぱいなまま。
部屋に戻れば、自分の部屋並にくつろぐ涼がいて、無意識に眉間にシワを寄せる自分がいる。
「三津谷、1人で帰したの?」
「……逃げられた」
1人で帰したくて帰したんじゃない。
あいつが、あからさまに俺との間に距離を置いてるのが分かったから、キスした手前、強く出られなかった。
「なら、俺送ってけば良かったかな」
「は?」
「だって三津谷、女の子だし。もう外暗いしな。心配じゃん?」
「……っ、」
分かってる。
涼は、こういう奴だ。
相手が花だからとか、そういうんじゃなくて。
誰に対しても当たり障りなく優しくて、気が利いて、それでいて誰のことも好きじゃない。
1番、残酷なタイプ。
だから、きっと花に対してもそんな感じなんだろうって。
───つい最近まではそう思ってた。
「それと、邪魔してごめんな?勉強会。……さすがに弟とは言え、他の男と三津谷を部屋に2人っきりにするのは嫌だったから」
───ドクンッ
体が嫌な音を立てる。
バクバクと周りの音をかき消すみたいに、うるさく暴れて、俺の呼吸を乱していく心臓が、ギュッと握りつぶされるみたいな感覚を覚えた。