花ちゃんは今日も頼くんの言いなり


「……なに、涼って花が好きなわけ?」


なるべく、顔に出さないように。
あまくで平常心を装う俺に、フッと小さく涼が笑う気配がして、イライラが募っていく。



「さぁ?どうだろ。……恋とか、よくわかんないな。面倒くさいし、自由じゃないし?」



「あっそ」



涼の言葉にホッとしたのも束の間で、



「でも、三津谷は俺の中では色んな意味で特別って言うか……大事な存在、かな」


「……っ!?」


「あとあの匂い。香水かな?あれ反則だよなぁ。すげぇいい匂いで危うく理性飛びかけた」



涼の言葉に、思わず目を見開いて涼を見つめれば、涼の口元が弧を描く。


天然で、掴みどころがなくて、爽やかで誰に対しても優しい涼のこんな顔はきっと俺しか知らない。


……間違いなく、俺で遊んで楽しんでる時の顔。
昔から、いつも涼は俺で遊んでは楽しそうに笑った。


きっと、涼は天然なんかじゃなくて人口で。
あえて必要以上に人が寄ってこないように、天然なフリをして生活してるだけ。


「頼も、三津谷の前では男の顔すんのな」


「っ!」


だから、嫌なんだよ。


昔から、どんなに澄ましてたって、涼にはいつも自分の心を見透かされてる気がしてた。


今だって、そう。
目の前にある涼の柔らかい笑顔は、俺が花を好きだってことに、きっととっくに気付いてる。
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