花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
───ガチャッ
「ほら、パパ!遅れちゃう!急いで〜」
私の手がインターホンに触れるより早く、勝手に開いた五十嵐家の玄関。
バタバタと中から出てきたのは、フォーマルなドレスに身を包んだ綺麗な人。
その後ろから「そんな急いだら転ぶぞ」なんて呆れた男の人の声。
「あら……!うちに用事かしら?」
「あ、えっと……」
綺麗な女の人は、私を見つけて大きな目をフッと柔らかく細めた。うわ、こうしてみるとすごく涼くんにそっくり。
もしかして、この人が……涼くんと頼くんのお母さん?
「涼ちゃんは今日デートだって聞いてるし……あ!もしかして、頼くんの彼女さん?」
「……え!あ、いえ!」
「あら、違った?ごめんなさい、私ってば早とちり」
「いえ。……頼くんいますか?」
私の言葉に、パァッと顔を輝かせて”やっぱり、頼くんの?”と、再び盛り上がってしまった頼くんママ。
「ほらママ、お客さん困ってるから。ちょっと落ち着いて」
「……やだ、私ったら……!頼くんから女の子の話なんて聞いたことないから、嬉しくてつい!って、大変パパ!もう結婚式始まっちゃう!急がなくちゃ」
それを、後ろから靴を履き終えたらしい頼くんパパがなだめると、頼くんママは時計を気にして慌てだした。