花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
あれだけ覚悟を決めてきたはずなのに、頼くんを前にするとどうしても気持ちが揺らぐ。
何から話せばいいのかも分からず立ち尽くして、弱気になる自分に打ち勝つべく、ギュッと握りしめる手に力を込めた。
「じゃあ、デートが苦しかったって報告なら聞いてくれる?」
頼くんに会えて嬉しいのと、これからのことを思うと怖いのと、不安なのと。
色んな気持ちが私を一斉に襲ってくるから、ちっとも悲しくなんてないのに涙が滲んでくる。
「……なんだよそれ」
そんな私の言葉に眉間に皺を寄せた頼くんは、”あー!もう”なんて言いながら、階段を駆け下りて、
「とにかく中入れば。風邪ひく」
なんて。
簡単に私に優しくする。
もう、外の風は冷たい。
だけど、不思議と寒さを感じることはなかった。
きっと、私の体が頼くんへの熱で浮かされてるせいだ。
相変わらず玄関の前に立ち尽くしたままの私。
痺れを切らしたらしい頼くんは、グイと玄関へ私を引き込むと、そのまま玄関のドアを閉める。
───ガチャン、と音がして。
私と頼くん2人だけの時間が流れる。