花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
「なに?頼くん照れてるの?可愛い〜」


クスクスっと口元に手を当てて、少しからかってみれば、頼くんは一瞬私へと視線を向けてまたすぐに前を向いてしまった。

あれ……?怒っちゃった……?

なんて、心配になったのもつかの間で、


「花には言われたくない」

「え……?」

「男に『可愛い』は言っちゃダメだって、習わなかったのかよ」


再び私を捉えた頼くんの瞳が、暗闇のせいか、いつもよりやけに色っぽくて、思わず息を飲む。

そんなのどこの講座で教えてくれるんですか。誰からも習いませんでしたよ。

なんて、頭の中で頼くんの質問に答えながら、


「やっぱり、頼くんって航とは違うのかな」

「は?」

私がずっと抱いていた疑問を口にすれば、頼くんが静かに首を傾げた。

「弟の航と、弟の友達の頼くんは、何か違うのかな?可愛いって思うのは、航と同じ弟みたいな感覚なのかな……って思ってたんだけど。頼くんは、可愛いだけじゃないって言うか」

むしろ、ドキドキする。

与えられる感情は『可愛い』よりも『ドキドキ』が勝っている気さえする。
< 45 / 214 >

この作品をシェア

pagetop