花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
だから、私は戸惑っているんだ。心なしか、涼くんに感じる……あのドキドキと似ている気さえするから。
「航と一緒は困る。つーか、同じじゃないだろ。航は弟かもしんねぇけど、俺は弟じゃないし」
「……うん」
「男だよ、俺は」
頼くんの言いたいことが、分かりそうで分からない。航は弟で、頼くんは男の子。
いやいや、航だってあれでいて、ちゃんと性別は男なんだよ。
「……んー」
「分かってねぇだろ、完全に」
……やばい、バレた。
だって、頼くんの言葉はいつも少しだけ複雑で、単純な私の脳みそには難題ばかりなんだもん。
そんな私の頭を冷ますかのようにビューッと生暖かい風が吹く。もちろん、こんな生暖かい風じゃ私の頭は冷えてはくれないけれど。
私と頼くんを包むような柔らかい風は、心地いい。
私の長い髪をサラサラとさらいながら吹き抜けるそれは、ほんのり夏の匂いがした。