花ちゃんは今日も頼くんの言いなり


「……じゃあ」

「ん?」


フワッと香る、ほのかに甘く、だけど爽やかで香水みたいにキツさを感じない頼くんの匂い。

制汗剤かな?

なんて、考えているうちに、グッと縮まってしまった私と頼くんの距離。


「ひとくち、ちょーだい」

「あ、」


私の手ごとイチゴオレを引き寄せて、ストローをくわえた頼くんにドキッと心臓が跳ねた。

「……あっま、やっぱ鳥肌立つ」

「じゃ、じゃあ…の、飲まなきゃいいのに!」


咄嗟に平常心を装ってみるけれど、ドキドキうるさい心臓が邪魔をして、上手く言葉を紡げなかった。

あぁ、もう。どうしよう。
変に意識して、次のひとくちが飲めないや。

「……飲まねぇの?」

そんな私を見て、口角をあげて意地悪く笑う頼くんは、悪魔なのかもしれない。

< 61 / 214 >

この作品をシェア

pagetop