花ちゃんは今日も頼くんの言いなり
勉強が出来て、運動神経も良くて、女子から人気があって。
俺が涼にかなうところなんて、多分1つもないんじゃないかってくらい。本当によく出来た兄だと思う。
ただし、度が過ぎる天然を除いて、な。
別におもちゃなんてもらう時だけで、後になれば兼用みたいな所があったし。
正直、譲ったって、どうだって良かった。
───だけど。
「……ふぅん。その可愛いってどっちが?」
「え?」
「髪型?それとも、花?」
俺の質問に、面食らったみたいな顔した涼が「それは考えてなかった」なんて言いながら、再び考える素振りを見せる。
それで涼の気持ちに火をつけたら、自分がやりにくいだけだって分かってるけど。
……どうしても、口にせずにはいられなかったんだから仕方ない。
それに、天然な涼のことだから、どうせ気付かない。
「まぁ、でも。三津谷は可愛いよね」
ヘラッと、笑って俺を見る。
サラッとそんな言葉を口にできる涼を、俺はきっと心のどこかで羨ましく思っていて。
「……そう?」
自分にないものを妬んでる。
ただ。俺にも、涼にだって譲りたくないもんが1個だけ出来てしまった。