花ちゃんは今日も頼くんの言いなり


***


始まった調理実習。
エプロンと大嫌いな三角巾を装着して、前髪と一緒に三角巾をアメピンで2箇所止めた。


私のエプロンがキャラクターもののせいで、傍から見たら完全に保育士らしく、『うわ、保育士めっちゃ似合う〜』とか『花せんせ〜』なんてからかわれたけど。


ふと、将来は保育士も……ありかもとか想像したりして。



「卵は、卵黄だけ使うから!間違えないようにね〜」


家庭科の先生は若くて綺麗な鈴村先生。
みんな鈴ちゃんって呼んでいる。


そんな鈴ちゃんの言葉に「は〜い」と色んな班から声が上がる中。


「ね、花。もういいと思うんだけど」


硬いままのバターをヘラでクリーム状になるまで練り込んで、砂糖を入れてよく混ぜる私を、隣で美和子ちゃんが心配そうに覗き込む。


もちろん、バターがクリーム状になった頃にはもう手が痛かったけど、


涼くんに美味しいクッキーを渡すんだ!って思ったら愛を込めてもっともっと混ぜたくなって……
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