花ちゃんは今日も頼くんの言いなり


バニラエッセンスを数滴たらしたら、一瞬で広がるバニラの甘い香り。


すごい、香り付けってこうやってするんだ。

私の想いも、こうしてエッセンスとして入れられたら分かりやすくていいのに。


どんなに涼くんが鈍くても、
どんなにド天然でも、

いやでも私の気持ちが分かっちゃうような、魔法のエッセンスが欲しい。


……って、こんなことを高校2年生にもなって本気で考えちゃう私ってかなりイタイ。



「よし!生地できた!」

「いい感じじゃない?あとは、型抜いて焼くだけ!」


美和子ちゃんと顔を見合わせて笑って、2人で色んな形に生地をくり抜いていく。


ハート、花、星、クローバー、くまさん。


どれも可愛くて、綺麗に抜けた生地たちを見てはまたニヤける。


「よし、焼こう!」

「うん!……あれ、美和子ちゃんは?誰かにあげたりしないの?」

「私?……あげないよ、クッキーなんていかにも好きな人にあげるもんじゃん」

「……え?それって、あげたい人はいるってことは?」

「いーから!ほら、早く焼くよ!」


あ、美和子ちゃん逃げた!!
絶対あとで問い詰めてやるんだからね〜!
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