ぬくもり
「毎日イライラして小さな優を何度も何度も叩いたり、蹴ったりした。

突き飛ばしたり、物を投げつけた事もある。

優は、私の顔色だけを伺うお人形みたいな子になった。」




俺も気付いていた事だった。


何とかしなきゃならないと思いながらも、ずっと目を背けていた現実を美沙にまざまざと見せつけられた思いだった。




「でもね、凌君と翔君が、私と優を救ってくれたの。

あの子達に会って、私は初めて優を愛おしいと思えるようになったの。

あの子達の言葉が、私にきっかけを与えてくれたの。」




「そんなお前が、この先優を1人で育てられる訳ないだろっ!」



そんな卑怯な事しか言えなかった。



虐待に気付きながらも、何もしなかった俺が、虐待を理由に離婚を踏みとどまらせようとしている。


自分でも嫌になる位…俺は卑怯でずるい人間だ。



「そう思われてもしょうがないけど…。
でも、それなら司は優に何をしてきたの?

何か少しでも優の為になる事した覚えある?」



「それは…」



美沙の切り返しに反論する事ができない。
そう、俺は本当に何もしてこなかったんだから…。

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