ぬくもり
「司と一緒には、優に良い環境を作れないと思ったの。」



美沙は凄くはっきりとキツイ事を言った。



「私ね、優を愛したかったの。

虐待していた時、優の事を愛せなくて苦しんだ。
凄く、凄くつらかった。


ようやく優を愛せるようになって、司が家に帰ってくるようになって、家族としてやり直せるかもしれないって、そう思ってた。」


「だったら何で?」



「司の裏切りを、また知ったから…」



とうとう美沙が涙を零す。


「まーま?」



優が心配して、美沙の膝をよじ登る。


「まま?」


優は小さなその手で、美沙の目から溢れ出る涙を拭っていた。


今にも自分が泣き出しそうな顔をしながら…。



その光景に、俺の胸はひどく痛んだ。


俺の胸から訳のわからない感情が溢れ出す。

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