ぬくもり
かなり急いでる様子の司のあとを、見失わないように優を抱きながら必死で尾いて行く。



あまり近付くと見つかってしまう。


でも、離れすぎると司を見失ってしまう。



四苦八苦しながら、何とか司を見失わないように尾いて行くと、司は一軒のカフェの中に姿を消した。



カフェの造りは、アンティーク調なおしゃれなお店。



男同士や1人でなんて、およそ入りそうもない感じの店だ。



私は抱きかかえていた優を下ろし、手を繋ぐ。



どうしても店に入っていく事を躊躇してしまう。



私は少しの間、店の前に佇んでいた。


勢いこんで来てしまったが、1歩を踏み出す勇気が出ない。


「まーま?」


優が不思議そうな顔で私を覗きこむ。



私は優をそっと抱きしめた。



優のあったかいぬくもりが私に勇気を与えてくれる。



大丈夫。
私には優がいてくれる。


何があっても今のまま暮らすよりはずっといいはず。



覚悟を決めて店のドアを開けた。



心臓が早鐘のように鳴りだした。

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