ぬくもり
「司、どうゆう事?
これが残業?」


自分でも驚くくらい低い声。



私が声を掛けた時の、凍りついたような司の顔が彼女との関係を物語っていた。


司が何か言ったけど、そんな司にはお構いなしに瀬田幸代に視線を向ける。



「井上とは、だいぶ長いんですよね。」



瀬田幸代は私の問いには答えず、黙って俯いたままだった。

私の足は微かに震えていた。



「私、離婚しますから。
井上、あなたに差し上げます。」



俯いていた瀬田幸代が顔を上げた。


私は彼女が何か言おうとしたのを感じ取って、慌てて優を連れその店を立ち去った。



彼女の言葉を聞くのが怖かったから…。
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