ぬくもり
次の日、私と優はホテルで遅い朝食を食べた。



「まま、おいちー、ここ、おいちー」


優が嬉しそうにほっぺたを叩く。

優は初めてのホテルの朝食にご満悦のようだ。


優とは対照的に、昨日眠る事のできなかった私は、全く食欲がなく、サラダだけを無理に口の中に詰め込んだ。





司がどうしていたのか。



離婚届けを見て何を思ったのか。


あの後、彼女とどう過ごしたのか。



離婚を決意しても、私の頭の中は司の事で埋められていた。


優の起きてる間は、一生懸命泣き出すのを堪え笑顔を作り続けた。


優が眠ってしまった後、溢れだす涙を止める事はできなかった。



何度も何度も、司の名前を呼び続けた。

過去を後悔し続けた。
自分を責め続けた。


でも、狂ってしまった歯車を、もう元に戻す事はできない。


私は声が枯れるまで泣き続けた。





私は優を連れホテルのチェックアウトを済ませる。


外に出て射すような日差しの眩しさに目を細める。




優の帽子持ってくるべきだったなぁ…。


私は部屋を探すために、仲介業者に3軒程物件を見せてもらった。


当たり前の事だけど、家賃が安いところは築何十年もたっていて、日当たりも悪くとても住む気になれない。



離婚しても司には、慰謝料はもちろん優の養育費も出してもらうつもりはない。

もちろん引っ越しだって…。



私が独身時代の貯金が、結婚後も手つかずのまま残っている。



私はそのお金を、引っ越しと当面の生活費にあて仕事を探そうと思っていた。



やっぱり家賃はもうちょっと考えなきゃ駄目なのかなぁ…。


私は頭の中で計算しながら溜め息をつく。

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