ぬくもり
時間ぴったりにインターフォンが鳴り響く。



私の全身に緊張が走る。



玄関に向かう足取りが重い。



私は、彼女に会う前から逃げ出したい気分にかられていた。


「どうぞ…。」



玄関に入ってきた彼女を、私は上から下まで値踏みするかのように見ていた。



間近で見た彼女はやっぱり綺麗で、センスの良いかっちりしたベージュのワンピースが良く似合っていた。



私の心の中は、彼女に対する敗北感と嫌悪感でいっぱいになっていく。



「どうぞ、掛けてください。」



優を隣の和室に連れて行き、お気に入りのビデオを流す。


優はすぐに夢中になって見始める。



私は冷たいアイスティーを用意し、ガムシロを添え彼女の前に置いた。



彼女は黙って会釈する。



私達の間に沈黙が続く。




何で彼女は話しださないんだろう。


いったい何しにきたんだろう。



私は何も話しださない彼女にイライラしていた。



時計の時を刻む音だけが今はやけに大きく聞こえる気がする。

< 148 / 202 >

この作品をシェア

pagetop