ぬくもり
ドアを開けた司は、ポンっと私の背中を押した。
私は一歩一歩踏みしめるようにして、部屋の中に入って行く。
「お姉ちゃん、来てくれたの?」
妹の沙耶が嬉しそうな顔で近づいてくる。
私が家を出た頃はまだ学生で幼かった沙耶は、すっかり大人の女性になっていた。
殺風景な病室の窓際にぽつんとある簡素なベッドに、横たわっていたその人には、沢山のチューブが取り付けられてた。
私は眠ってるその人から視線をそらせない。
沙耶と司が、挨拶を交わしているのを、私は遠くに聞こえていた。
「まーま?」
いつもと違う私の様子に気付いた優が、私のスカートの裾を引っ張る。
私は優と手を繋ぎ、眠っているその人に、少しずつ近寄って行く。
そんな私を支えるように、すぐ後ろに司が居てくれた。
「お母さん!
お姉ちゃん来てくれたよ。
お母さん!」
沙耶が何度もその人の肩を揺する。
「美沙…?」
そう呟きながら、その人は目を開けた。
変わってしまってはいるが、確かに母親。
あんなにふくよかだったのに、すっかり痩せ細り、毒々しい程の厚化粧が嘘のような土気色で何の化粧っ気もない顔。
昔の華やかさが嘘のよう。
でも…紛れもなく、私の母親だった。
私は一歩一歩踏みしめるようにして、部屋の中に入って行く。
「お姉ちゃん、来てくれたの?」
妹の沙耶が嬉しそうな顔で近づいてくる。
私が家を出た頃はまだ学生で幼かった沙耶は、すっかり大人の女性になっていた。
殺風景な病室の窓際にぽつんとある簡素なベッドに、横たわっていたその人には、沢山のチューブが取り付けられてた。
私は眠ってるその人から視線をそらせない。
沙耶と司が、挨拶を交わしているのを、私は遠くに聞こえていた。
「まーま?」
いつもと違う私の様子に気付いた優が、私のスカートの裾を引っ張る。
私は優と手を繋ぎ、眠っているその人に、少しずつ近寄って行く。
そんな私を支えるように、すぐ後ろに司が居てくれた。
「お母さん!
お姉ちゃん来てくれたよ。
お母さん!」
沙耶が何度もその人の肩を揺する。
「美沙…?」
そう呟きながら、その人は目を開けた。
変わってしまってはいるが、確かに母親。
あんなにふくよかだったのに、すっかり痩せ細り、毒々しい程の厚化粧が嘘のような土気色で何の化粧っ気もない顔。
昔の華やかさが嘘のよう。
でも…紛れもなく、私の母親だった。