ぬくもり
「来てくれたの?」


弱々しく彼女は微笑んだ。



「別に来たくて来たわけじゃないから…」


私の放った一言で、病室内は重苦しいムードに包まれる。



「井上さんも…
わざわざ一緒に来てくれるなんて…本当にすいません。」



私の言葉を無視して、今さらまともそうに母親面する。



「お母さん、お姉ちゃんの子!
2歳で、優ちゃんだって!」



沙耶が、ムードを変えようと明るく振る舞う。



「そう…
美沙、お母さんになったの。」




昔の鬼のような形相が嘘のように、あったかくて優しい目を私に向ける。




この人はだれ…?

何でそんな優しい目で、私を見てるの?


私は、何も言えないまま黙って突っ立っている。

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