ぬくもり
「なんで…
なんで今さら…?


ふざけないでよ!
今さら何なのよ!

死ぬのが怖くなって最後くらいはいい事しなきゃって事?

あたしが…
あたしがどんだけ苦しんできたと思ってんのよ!」



今まで溜め込んできた私の感情が、涙と一緒に堰を切ったように溢れだす。


「美沙!」


興奮した私を司が制す。



「いいんですよ、井上さん。


美沙には何を言われたって当たり前の事してきたんだから…

本当に、本当にごめんなさい。」



ボロボロ涙を零しながら、私に頭を下げる彼女の姿が、凄く小さく見える。




どうして…?


泣きながら謝るなんてずるいよ。



そんな人間じゃないでしょ?


いつも理不尽な事言っては殴り続けたじゃない。




「今さら謝ったからって、許せるわけないじゃない!

私がどんだけ苦しんだと思ってるの!

今さら…今さら…
泣きながら謝るなんてずるいっ…」



顔を覆って泣き出した私を、優しいぬくもりがそっと包み込む。


「ごめっ…なさ…美沙…」


彼女は、自分のからだにつけられているチューブを引き抜いて、私の事を抱きしめていた。


何度も謝りながら…

「愛し…たかっ…た…美沙を…」




同じなの…?


この人も、あたしと同じように苦しんでいたの?

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