ぬくもり
思えば、私も自分の気持ちを抑える事ができず、優を虐待していた。



私には、立ち直るきっかけがあった。


でも、母にはそれがなかった。



多分、沙耶の父親と結婚する時に、可能性を信じたんじゃないかって…


でも、一緒にいる事でお互いに私への暴力がエスカレートして、歯止めが効かなくなったんじゃないかって、そう思えた。



母親も、あたしと同じで弱かった。


不安と孤独に、苦しんでた。



みんな弱くて小さい、決して1人では生きていけないのかもしれない。




次の日沙耶は仕事で、私達は帰る前にもう1度母の病室を訪ねた。


母は起きていて、私達を見ると嬉しそうに笑った。


優を膝の上に乗せて、目を細めて微笑んだ。



母の笑顔は、私が焦がれてやまなかったお母さんの笑顔だった。


それが、私が見た最後の母親の姿になった。




2週間後、母は亡くなった。




大腸にできた腫瘍があちこちに転移していたらしい。


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