ぬくもり
私がインターフォンを押すと、すぐに凌君が出てきた。


いつもの元気な笑顔とは違い、泣きはらした真っ赤な目の凌君。


「凌君、どうしたの?」


声をかけた瞬間、凌君は私に抱きついて泣きじゃくった。



凌君を慰めながら話を聞くと、2日前から翔君が風邪で寝込んでるらしい。


岡崎さんは毎日凌君が帰ってくるまで、翔君の看病をして凌君が帰ったら仕事に行って、帰りは深夜の帰宅。

会社から持ち帰った仕事を寝ないでしているので、お父さんまで病気になったらと、1人で考えてたら段々悲しくなってしまったという事だった。




「凌君は、本当に家族思いの良い子だねぇ。」


私は、凌君の頭をグリグリ撫でた。


「明日から、凌君とお父さんの会社の時間は、私が翔君の看病するよ。」



「本当?」


凌君の顔がパッと笑顔にかわる。


「うん、約束!」


私は凌君に小指を差し出す。




私は、その夜帰ってきた司から岡崎さんの携帯の番号を聞き、風邪が治るまでの翔君の面倒をみさせて貰いたいと電話した。



司は、よその家庭にはいっていくような事はしない方がいいと言ったが、凌君と翔君の為に何かしたいと言い張る私に根負けしたようだった。



岡崎さんも、最初は優にうつしたら大変だからと言っていたのだが、私の粘りに折れてくれ、最後はいつもの優しい声で『お願いします』と言ってくれた。



ちょっと強引で岡崎さんにとっては迷惑かもしれないけど、自分は何もできないと小さな胸を痛めてる凌君の為に何かしたかった。


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