ぬくもり
翌朝、私は司と一緒にエレベーターで1階まで下りた。


今日から司は、1泊2日で出張に出掛けてしまう。



「行ってらっしゃい!
気をつけてね。」


司から離れたがらない優と一緒に、司をマンションの玄関まで送った後、岡崎さんの家のインターフォンを押す。



中からはスーツ姿の岡崎さんが出てきて、私と優を部屋の中に招き入れてくれた。


岡崎さんは家の中がひっくり返っていて申し訳ないと何度も謝りながら、憔悴しきった顔で会社へと出かけて行った。



翔君は、まだ少し熱が高くてぐっすりと眠りこんでいる。



私は、優に毎朝見せている幼児むけのテレビ番組をつけ優に見せる。


優が夢中になり始めたところで、私は朝食のままのダイニングを片付け始める。


私は洗い物も終わり、静かに翔君の様子を見に行くと、翔君はもう起きていて布団の上に座りこんでいた。


「あら、起きてたの?
おはよー。」


「にーちゃは?
ぱぱは?」



翔君は、不安そうな顔でキョロキョロしながら2人を探す。

私は翔君を膝の上にのせた。



「凌君は学校。
パパはお仕事。

翔君は美沙さんとお留守番…できる?」



私が翔君の顔を覗きこむと、ニッコリ笑って右手を高くあげた。


「じゃあ、ご飯にしようか?」



私は家で作ってきたお粥を温めなおし、フーフーしながら翔君に食べさせる。


少し元気になってきたのか翔君はお粥を全部平らげた。



翔君が起きてるうちに、全部の部屋に掃除機をかけてしまう。


やはり男所帯のせいか、どの部屋も埃っぽく棚や箪笥の上なんかは埃で真っ白になっていた。



私は凌君の布団と、岡崎さんのらしき布団をベランダに干す。



洗濯…とも思ったが、私は気にならないけど岡崎さんは嫌かも…


洗濯は中止して帰ってきた凌君にお願いする事にした。



掃除するところは他にもいっぱいあって、優や翔君の様子を見ながら、私は次々と部屋を磨き上げていった。

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