ぬくもり

確かにそうかもしれない。


俺はまだ、自分の思いを美沙に伝えていない。



このチャンスを逃せば、俺は一生優に会えなくなってしまう。



「井上さんは、もう優ちゃんのお父さんになれてるじゃないですか。

奥さんの事も、お母さんと向き合わせる為に、仕事を休んで連れて行かれたんじゃないですか?

あなたは、逃げずに奥さんを支えたじゃないですか。

2人の事を思って流してる涙が、その証拠じゃないですか。」



そう言ってくれた岡崎さんは、いつも以上に優しくあったかい笑顔だった。



俺は岡崎さんの前でグシャグシャに泣いた。




美沙がなぜ、岡崎さんに話を聞いてもらったのかがわかった気がした。


全てを許し包みこんでくれるあったかさを岡崎さんは持っていた。



俺も美沙も、人として、親として、許されない最低な事を優にしてきた。



普通の人なら、まず引いてしまうだろう。



自分達が人に言えない事をしておきながら、人に知られるのが怖がった。
人に非難されるのが怖かった。



だから、美沙も俺も誰にも話せず自分達の罪に苦しんだ。


でも、岡崎さんは全てを知った上で、俺達家族を受け止め、受け入れてくれた。


きっと休んでいた間の仕事も溜まっているだろう。


子供達の側にいてやりたいだろう。



そして、何よりも疲れきってる自分の時間をもちたいだろう。


なのに、自分の事のように親身になってくれる。



岡崎さんの気持ちが本当に嬉しかった。


俺も、いつかあんなあったかい人間になれるだろうか。



あたたかく大きな心で、美沙と優を一生支えていきたい。


一生守っていきたい。



俺は、岡崎さんのお陰で、新たな決意を固める事ができた。

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