ぬくもり
迷いながらも、充電している司の携帯をそっと開く。


脈を打つのが早くなってるのが、自分でも容易にわかる。



はやる鼓動を抑えながら、私は携帯のボタンを押した。



発信履歴も着信履歴も、一番上に瀬田幸代という女の名前。

その女は、私以上に履歴に残されていた。


中には何人か知らない名前もあったが、その女と連絡を取り合ってる回数の多さで、私はこの女だと、確信した。



携帯のボタンを押す指が震える。


これ以上は見ない方がいい。



わかっていた。


わかっていたけど、私は震える指でメールの履歴を開き始める。



メールの送受信履歴には、司と瀬田幸代のやり取りがたくさん残されていた。



私への司からのメールはいつも用件のみ。

瀬田幸代へのメールは全然違った。



たくさんの愛の言葉や、どんな関係なのかまで、嫌でもわかってしまう内容。



会社の人なんだ…。


今度は司のポケットを探る。


ポケットには何もなく、諦めて私は財布を見る。


財布の中からは、イタリアンレストランらしき名前の店のレシートがでてきた。


日付は今日…。



私が不安に怯えてる間、司は女とここにいたんだ。



残業って言いながら女と一緒だったんだ。


今までずっと、あたしを騙してたんだ。


頭の中が真っ白になり、その場に座り込んでしまう。

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