ぬくもり
「俺らも乗るか?」


司がボートを指指す。



「ちょっと、大丈夫?
ひっくり返ったりしない?」



乗りこむ時のボートの不安定さに、泳げない私は気が気じゃない。



そんな私の心配をよそに、司はまず優を座らせ、私の手を引いて優の隣に座らせる。



不安定に揺れているボートに、優も不安げで泣きそうになり、必死に私にしがみついている。



「大丈夫だって!!」


司は慣れない手つきで、オールを操り始める。



ボートは不安定に進みだし、ギシギシッときしむ音をたてている。



私は片方の手で優の体を抱え、もう一方の手で、ボートの横のでっぱりにしがみつく。




ボートが池の真ん中辺りまでくる頃には、優はすっかり慣れキャッキャと喜んでいる。



私も風の心地良さを肌に感じ、少し開放的な気分になった時…


ガン、ガツッ、


他のボートとぶつかり衝撃を受け、私と優は無言で一気に固まる。



そんな私達を見て、司が爆笑する。


「美沙と優、怖がり方おんなじっ!」



「もう!
本当に怖いんだからっ!
そんな笑わないでよっ!」


と、言いながらも私も優もつられて笑う。



また、ボートに少し慣れてきた頃に、他のボートにぶつかったり、岸にぶつかって衝撃を受けたり、あまり満喫できないまま、ボートを返却する時間になった。

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