ぬくもり
怖い思いをさせられたボートから離れ、私達は公園内の遊具で優を遊ばせる。



優は、最近すべり台が大のお気に入りで、何十回も上ってはすべりを繰り返している。


優が、すべり台の階段を踏み外さないか、一段一段上って行く姿をハラハラしながら見つめている。


「ねぇ優、そろそろ違うので遊ぼうか?」


ハラハラさせられるので、いい加減に私は違う遊具を提案してみる。



「やだよー」



優はいたずらな笑顔を浮かべながら、また階段を上り始める。



「優は、もうこんなので遊べる程成長してたんだなぁ。

全然知らなかったよ。」



少し寂しそうに、すべり台の優を見上げる司の横顔。


その寂しそうな顔に、私の胸はキュッーと締めつけられる。


「ねぇ、司…」



私が話しだそうとしたその時…



「まま、あーんだよっ!」



優からの、お昼ご飯の催促…。



「そういえば、腹減ったなぁ。」



司が優を抱きあげる。




確かにお昼まだだけど、タイミング悪いって…。



私は出鼻をくじかれ、溜め息を漏らす。

< 194 / 202 >

この作品をシェア

pagetop