ぬくもり
「パパー!」



大きな声のする方を見ると、優と同じくらいの年の男の子が、お父さんの胸をめがけて駆けて行き、そのまま飛びこんで行く。

お父さんは笑顔で飛びこんできた子供を両手で受け止め、そのまま肩車した。



司も優も、起き上がってその光景を眺めていた。



「パパかぁ…」



司が寂しそうな顔で溜め息混じりに言った。



「ぱ、ぱ…?」



優は小さな声でそう呟いた後、駆け出して行く。



私達が、どうしたのかと優を見つめていると、優は私達から少し離れたところで立ち止まり、こっちに向き直った。




「ぱーぱ!」



さっきの子よりも大きな声で、司を見つめながらはっきり笑顔でそう言った。



司の目からは涙が溢れ出す。



「ぱーぱ!」



優はもう1どそう言うと、駆け寄ってきて、司の胸の中に飛びこんできた。



司は泣きながら、優を腕の中にしっかりと抱きとめる。




「優…優のパパにして…くれるか…?

優のパパで…いさせ…くれる…か…?」



司は涙で声にならない。


顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。



私の頬も涙が、次から次へとつたって流れていく。

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