ぬくもり
「もういいよ。
もういいから。

私達に大切なのはこれからだから…

これから一緒に生きていく事だから…」



司が私の胸の中で嗚咽を漏らす。



私は、昨日の夜に泣いている私を、司が慰めてくれたのと同じように、泣きじゃくっている子供のような司を抱きしめながら、司の大きな背中をさする。




「俺…優のち…ちおやっ…になってい…いか?」



司の言葉に、私のとまっていた筈の涙も、涙腺が壊れたように溢れだしてくる。


「何言ってんの?
も…父親じゃないっ…優がパパって…呼んだ…」



私も、司も、顔を上げてトンボを追いかけまわす優を見つめる。



「私達、今からでしょ?

今度こそ本当の家族に…なれる…よねっ…」



司は黙って大きく頷きながら、ごつごつした指で私の涙をそっと拭う。



「もう逃げないから。

俺が、優と美沙を一生支えていくから…」



私達、いっぱい回り道しちゃったけど、こんどこそ本当の家族になれるんだね。

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