ぬくもり
優の夜泣きは2歳になった今も続いていた。



優が泣きだすと、少ししてからヒステリックに怒りだす美沙の声、優の泣き声がひときわ高くなる。


そして美沙のすすり泣く声と一緒になり、静かになっていく。



俺は息を殺すようにして聞き耳をたてていた。


何もできずに…。



酒で紛らわす事しかできなかった。
ほぼ、毎日のように飲み歩いた。



飲んでも飲んでも、美沙と優の姿が頭から離れない。


だからといって、家にまっすぐに帰る事なんてできない…。



美沙と優に真正面からむきあう事ができなかった。



怖かったんだ。
俺は卑怯で、臆病な人間だから…。



何もできないままただ時間だけが過ぎてゆく。

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