ぬくもり
病院を出て薬局で薬を待っている時に、凌君と翔くんのお父さんが物凄い勢いで駆け込んできた。


初めて見る2人のお父さんは、お父さんの方が病気かと思うほど青白い顔をしていた。


「お父さん!」

よっぽど安心したのか凌君の目からは、また大粒の涙がこぼれ落ちる。


「翔は、翔はどうなんだ?」


凌君の両腕を掴み、大きくブンブンと凌君の体を揺する。


奥さんを亡くしたせいなんだろうか。


翔君の容態を問いただす、凌君を掴んだその腕は小刻みに震えていた。



「あの、翔君は大丈夫です。」


お父さんには、私達など目に入っていなかったようで、初めて私に顔を向けた。


「お父さん、美沙さんだよ。」



「あっ、失礼しました。
岡崎です。本当にご迷惑かけてしまいまして…
翔はどうなんでしょうか?
大丈夫なんでしょうか?」



慌てて頭を下げる2人のお父さんは、凌君と同じ、とても優しい目をしていた。


「安藤です。
凌君が呼びに来て、お宅にお邪魔したら痙攣が起きていたので、時間を計って、お医者さんに伝えました。

痙攣が治まるのも、意識が戻るのも早かったので、熱性痙攣だと言われました。

ただ、ご家族の方でてんかんの方がいらっしゃったり、この後も痙攣を起こすようなら、1度詳しく検査したほうがいいそうです。」



私はできるだけ丁寧に、その時の状況と医師からの言葉を伝えた。

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