ぬくもり
時間は11時を過ぎていて、昼間は騒がしいマンション内も静まり返っていた。


「こんな時間になってしまってすいません。
ご主人は大丈夫ですか?」

2人のお父さんは、すまなさそうな顔で私に聞く。



「えぇ、いつも遅いですから。
気にしないで下さい。」



マンションの玄関に入って行くと、驚く事に司がエレベーターで降りてきた。



「美沙、どこ行ってたんだ!
玄関の鍵も開いてるし、今捜しに行こうとして…
あれっ、岡崎さん?」



司が私の顔を見て駆け寄り、2人のお父さんを見て目を丸くする。



「あれっ、安藤さん?
あぁ、安藤さんの奥さんだったんですか?」



びっくりしながら、私と司を交互に見比べる。



「凄い偶然だなぁ。

いやぁ、うちの下の子が熱出してるのに、私と連絡がとれないんで、上の子が不安になって、奥さんに助けを求めに行っちゃったんですよ。

で、奥さんが病院に連れて行ってくれて。

本当にご迷惑おかけして申し訳ない。」



2人のお父さんは、深々と頭を下げる。

司とはどうやら知り合いのようだった。


「いやぁ、頭上げて下さいよ。

僕だって優が産まれる時はお世話になったんですから。

それにしても同じマンションだったなんてびっくりしましたよ。

お子さんは大丈夫なんですか?」



自分の子にも興味のない司が、他人の子を気づかえる筈もなく取ってつけたように司は聞いた。

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