ぬくもり
「大丈夫です。
本当に奥さんのおかげで助かりましたよ。」


2人のお父さんは、司の無神経さに気付いたか、気付かないのか笑顔で言う。


「司、子供達もいるから、そろそろ…」

話しが長くなりそうなところを遮る。



「あっ、そうだよな。
じゃ、お大事に。
失礼します。」



私も司の横で、優を抱きかかえたまま頭を下げる。



「奥さん、本当に助かりました。」


「美沙さん、どうもありがとう。
バイバイ!」



私達が上がって行くエレベーターをドアが閉まるまで、家族で見送ってくれる。


「それにしても偶然だなぁ。
岡崎さん、取引先の課長でさ、うちの課長の友達なんだよ。」



家に入ると、リビングのソファーに腰かけ、珍しく機嫌良く私に話しかける。



「そうなんだぁ、今まで同じマンションで気付かなかったの?」



私は、久し振りに機嫌良く私に話しかける司に嬉しくなり、お茶を淹れながら聞き返す。



「全然知らなかったよ。」



司は、私の淹れたお茶を1口飲む。



「そういえば、優が産まれた日はお世話になりましたって何かあったの?」



「あ、あぁ…」



司はちょっと話しにくそうに言葉を濁す。

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