ぬくもり
どうしよう…指輪があたっちゃったんだ。



「イタイ、タイィ、」


泣き叫ぶ優。


病院…病院に連れて行かなきゃ。



泣き続ける優の頭をガーゼで押さえ、優を抱きかかえエレベーターで下へと降りて行く。



優、ごめんね、ごめんねぇ、優。


優を抱きしめ涙が止まらない。



「井上さん、どうしたんですか?」


マンションの玄関を出たところで、今帰って来たらしい岡崎さんとぶつかりそうになる。



岡崎さんは泣いてる私と優の姿に驚いている。



「優が、私のせいで、優に怪我させてしまって…」


「ちょっといいですか?」


岡崎さんが優のガーゼをめくり怪我を見る。



「あぁ、結構開いてますね。
でも、深くはないから大丈夫ですよ。
さぁ、早く。
病院まで送ります。」



優の怪我に驚きパニックだった私は、タクシーを呼ぶ事すらしていなかった。


私は岡崎さんに甘え、乗せてもらう事にした。



「病院は?」


岡崎さんに聞かれ、病院を調べてこなかった事に気付く。


「あの、あまりにも慌てて調べてこなかったもんですから、駅前の救急病院で…」



「でしたら、前に凌が学校で怪我した時に行った整形外科が7時までだった筈ですから。」



「あっ、じゃ、そこにお願いします。」



優が痛がりながら泣き続ける声が、狭い車内に響く。



「優ちゃん、大丈夫だよ。
もうすぐ病院だからね。」



涙で声もだせずにいる私の代わりに、岡崎さんが優に優しく声をかけてくれていた。

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