田舎に行こう
どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
ほんの一瞬だったのかもしれない。
でも何時間にも感じた、その時間。

隆史は奈津を引き寄せて
抱きしめた。

隆史の中にすっぽりと
おさまる奈津に隆史は冷静に
『細いとは思っていたけど
 こんなに小さかったっけ』
なんて考えていた。
不思議と落ち着いていた。
正しくは隆史の心臓はバクバクしていた。
でも、気持ちの部分ではなぜか
益々、落ち着いてきていた。

逆に奈津は、動揺していた。

こんなことは今までにだって
何度もしていた。
あっくんとはそれ以上のことも
もちろんしていた。

でも、今隆史に抱きしめられて
確かにドキドキしている自分がいた。
隆史のとても純粋な気持ちが
自分の中に流れ込んでくるような
そんな感覚で、自分でも
驚くほどに緊張していた。

そしてどう答えようかも悩んでいた。

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