田舎に行こう
断ったのだが隆史は家まで
送ってくれると荷物をさっさと
自転車に積んで歩き出した。

弘美の視線が痛かった。

その視線を見てまだ解決は
していないのだと奈津は
感じていた。

隆史はどうするつもりなんだろう。
今はただ、隆史との
時間を大切にしようと
他のことは考えないでいようと
思いながらも頭の中は
弘美のことを考えていた。

ぼんやりしている奈津に
隆史は声をかけた。

「奈津?大丈夫か?」
隆史はあの告白から
初めて奈津と呼んだ。
みんなの前では恥ずかしくて
高科と呼んでいた。

「奈津だってぇ~~~」
奈津は隆史をからかった。

「なんだよぉ・・・高科が
 いいならそぅ呼ぶけど・・」
隆史は少しすねながら言った。

「奈津がいい」
奈津はにっこりと微笑んだ。
その笑顔がかわいくて愛しくて
隆史は久々に真っ赤になった。

真っ赤になった隆史が
愛しくて奈津は目を離せなかった。

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