夢で会いたい
「お弁当ってさ、彩りが大事じゃない?」
「何?いきなり。私が柊ちゃんに作るお弁当がいつも真っ茶色なことに対する批判?」
「そんなあなたにオススメなのがバランだよ。ミニトマトと卵焼きとバラン。これさえ入っていればおいしそうに見える。パッと蓋を開けた瞬間『あ、おいしそう』と思わせることが重要。それがバランの役割だよね」
「あとは味が混ざらないための仕切だね」
「つまりバランはいろんなおかずの良さを引き立たせるためだけに存在する。お肉、野菜、ベーコンアスパラ?ロールキャベツ?でも、バランを食べたいとは思わないでしょう?」
「食べ物じゃないからね」
「そう!あいつは食べ物じゃないんだよ!バラン男子!お弁当箱の中には入っている(バリエーションとして男の中には含まれている)けど、決して食べられない、それがあいつ!」
「ベーコンアスパラとかロールキャベツとか、別にお弁当のおかずの話をしてるわけじゃないでしょう。例えがズレてるよ?」
「それくらい奴はナイってこと!」
ここまで言っても真由は希望を捨てきれないらしい。
「食べられないってことはないんじゃない?人間であり、男なんだから。パセリでいいんじゃない?」
「パセリなら食べる人たくさんいるもん。買うと高いし。そんな上等なものじゃないよ。バランだよ、バラン」
真由はまだ不満そうに、何かと一緒にカフェモカを飲み下した。
独身男性なら誰でもいいってわけじゃないんだってば!
「もちろん無理にとは言わないけどね。お腹壊してもよくないし。ただ、本気で誰かを紹介してもらいたいなら、あんまり役には立てないな」
「わかった。元々そんなに期待はしてなかった」
「小雪に頼んだ方がいいと思うよ。瀬尾君って消防士じゃない?まともな人の一人や二人いると思う」
近くにいなかったから思いつかなかった!
「それだ!私の運命の相手は消防士!公務員だよ!Mr.MATOMOじゃない!」
「Mr.MATOMO・・・」
「早速メールしよう!『瀬尾小雪様━━━━━』」