夢で会いたい
ヤツは仕事で使う資料なのか、単純に読みたい本なのかわからないものをポツポツ買ったり注文していったりする。
インターネットで買った方が簡単だろうに、律儀な奴だ。
ありがたいにはありがたい。
今日も「最新の野菜事情に迫る!」という雑誌を買っていった。
うーん、どっちの仕事の資料かな?
もしくはただの趣味かもしれない。
「米田さんって~素敵ですよね~」
私を待つ間店内をうろついているヤツを見て、一緒にシフトに入っていた茉莉花ちゃんがうっとりとした声を出した。
「素敵?あれが?茉莉花ちゃんから見たらしなびたおっさんじゃない?」
22歳の彼女からしたら10歳も上なんて圏外だと思ってた。
私はそうだったから。
「男は30からですよ!それに米田さんってなんかミステリアスでかっこいい~」
ミ、ミステリアス・・・。
「生態不明ではあるよね」
「私、ちょっとお話してきまーす」
「ちょっと検品してきまーす」と同じ音色で茉莉花ちゃんがカウンターを出ていった。
一応モップを持って行っただけ偉い。
こんなところに住んでるから、あいつの恋愛事情なんかも耳に入ってくる。
石田医院の奥様と高校時代に付き合っていた、とか、大学の時彼女を家に連れてきた、とか。