向日葵の天秤が傾く時
アインス…ツヴァイ…ドライと降り懸かる厄介事
「ね、今日仕事終わったら飯行かない?」


「行きませんー!」



新人弁護士である砧怙驛(キヌタ ゴウ)の軽い誘いを、受付嬢の贔瀞学未(ヒイセ マナミ)は笑顔でにべもなく断る。



「学未ちゃんさー、ちょっとぐらい考えても」


「おいっ!いいから行くぞ!」


「ちょ、ちょっと…」



出勤前にやる気を削がれ驛が拗ねたその時、男の怒号が聞こえてきた。



「あれ、衢肖さんじゃない?」


「なんか揉めてるな、とにかく止めよう。」



男に腕を掴まれ引きずられているのは、同じ弁護士事務所に勤務する所長の秘書兼経理担当の衢肖巫莵(クユキ ミコト)だった。



「何してんだあんた。嫌がってんだろ。」


「砧怙さん……!」



「あ?何だお前ら。関係ないだろ!」


「関係大有りだよ。その人は俺らの先輩だから。」


「先輩とか関係ないだろ、こいつは俺のだ。どけ!連れて帰る。」



「はあ?あんた何言ってるわけ?離せよ!」


「お前が離せ!」



若い新人らしく、そして弁護士らしからぬ物言いで男に迫る驛。


学未は巻き込まれないように、それでいて隙あらば巫莵を引き離そうと機会を伺っている。
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